ICT化の進展と残された課題
こちらの施設では、ICT化の推進により業務効率化が実現する一方で、職員の身体的負担を軽減する新たな取り組みが求められていました。特に、移乗作業における職員の腰や手首への負担は長年の課題でもあります。
現場は作業効率化を優先するあまり、導入済みのリフトではなく従来のバスタオルを使った手早い移乗方法を好んでいました。
しかし、この方法は特に小柄な女性職員にとって手首の負荷が大きく、怪我による現場離脱のリスクが常に伴っています。このため、施設では新たな移乗機器の導入を真剣に検討し始めました。
最適な移乗機器を求めて
課題解決のため、施設では複数の移乗機器を検討し始めました。候補には「onbu」や「Hug」といった製品があがり、職員からはどちらも高い評価を受けていました。
しかし、利用者が実際に試してみたところ、予期せぬ問題が浮上しました。「Hug」は、ある程度の筋力が必要で、立位を保てる利用者向けであることが判明し、今回の目的には合いませんでした。また、「onbu」は、利用者から胸部と脇への圧迫感があるとのフィードバックを受け、導入は見送られました。最終的に、施設は職員の利用者の両方の意見を慎重に検討した結果、「SASUKE」を導入することを決定しました。
製品選定の本質
この一連の製品選定プロセスを通じて、施設の管理者たちは重要な教訓を得ました。
それはどんなに職員が「良い」と評価しても、利用者が実際に使用してみるまで、製品の真の価値や効果は分からないということです。
職員と利用者の間では、筋力や骨格、製品に対する感覚に大きな違いがあります。
この気づきをもとに、施設では職員の負担軽減に加え、利用者の安全性と快適性を最優先に考え、現場でのデモを通じて、職員と利用者双方にとって最適な製品を選ぶ方針を定めました。多くの施設に対して、技術やツールの導入において、実際に試すことで初めて見えてくる課題や価値があることを改めて訴えたいと考えています。








